百貨店のカウンターに立っていた頃、男性のお客様は、驚くほど同じところで足を止めていました。口紅の色と、香水の香りです。
「彼女に贈りたいけれど、どの色が好きなのか分からない」。この一言を、何度聞いたか分かりません。そして、その迷いは正しいものでした。色と香りは、コスメのギフトで最も外しやすい要素だからです。
この記事では、元シャネル・ディオールのBAとして売り場で見てきたことをもとに、男性が失敗しないための基準を正直にお話しします。何を避け、何を見ておけばいいのか。そして、贈り物が本当に上手な方は、何をしているのか。
- 男性がつまずくのは、なぜ「色」と「香り」なのか
- カウンターでよく聞かれた3つの質問と、私の答え
- BAとして止めたくなった買い方
- 「この人は分かっている」と思った男性の共通点
- クリスマスに贈るなら、いつ動くべきか
💡 この記事は「選び方の基準」に特化しています。贈る相手が彼女なら 彼女へのコスメプレゼント、具体的な商品を予算から探したい方は プレゼントコスメおすすめ|予算別、香水に絞って選びたい方は 初めての香水5選(レディース) をご覧ください。
つまずくのは、ほぼ「色」と「香り」
男性のお客様がカウンターで立ち止まるポイントは、ほとんど決まっていました。口紅のカラー選び。そして香水の香り選びです。
これは、決してセンスの問題ではありません。どちらも「相手の好み」を知らないと選べないという構造になっているからです。
口紅の色は、似合うかどうかだけでは決まりません。その人が「自分に似合うと思っている色」があり、普段使っている色の系統があり、その日の気分で選び分けています。他人が外から見て当てにいくのは、かなり難しいことです。
香りはもっと難しいかもしれません。香りは記憶や好き嫌いと強く結びついていて、理屈で説明できない部分が大きいからです。同じ香りでも、つける人の肌や体温で印象が変わります。試さずに選ぶのは、やはり勇気がいります。
だからこそ、この2つでつまずくのは自然なことです。問題は、そこで「なんとなく」で決めてしまうことのほうにあります。
カウンターでよく聞かれた、3つの質問
男性のお客様から受ける質問は、だいたい3つに集約されていました。それぞれに、私がどうお答えしていたかを書きます。
①「いま流行っているものは何ですか?」
いちばん多い質問でした。お気持ちはよく分かります。流行っているものなら間違いない、という発想は自然です。
ただ、正直にお伝えすると、流行だけを軸に選ぶのは、実はあまり安全ではありません。話題のアイテムは、すでに相手が持っている可能性がありますし、流行の色は個性が強いものも多く、好みが分かれます。
流行を知っておくことは無駄ではありません。会話のきっかけにもなります。でも、それだけを頼りに決めるのは避けたほうがいい、というのが私の考えです。
②「◯円くらいで、何かおすすめはありますか?」
金額を先に提示して、そこから相談してくださる方です。これは、とても良い聞き方です。
予算が決まっていると、売り場の側はすぐに提案に入れます。逆に「特に決めていない」と言われるほうが、実はご案内が難しいのです。選択肢が広がりすぎて、かえって迷わせてしまうからです。
「これくらいの金額で贈り物を探しています」。この一言があるだけで、カウンターでの時間はぐっと短く、的確になります。金額を先に言うのは、恥ずかしいことでも失礼なことでもありません。
③「人気の限定品はありますか?」
限定品を狙う発想そのものは、悪くありません。特別感がありますし、贈り物として喜ばれやすいのは事実です。
ただし、ここにはタイミングという落とし穴があります。人気の限定品は、店頭に並ぶ前に予約でなくなることが珍しくないからです。この点は後ほど詳しくお話しします。
BAとして、止めたくなった買い方
売り場にいて「それは少し待ってください」と言いたくなった買い方が、ひとつだけあります。ご自分の好み基準で選びすぎてしまうケースです。
「俺はこの色が好きだから」「この香りがいいと思う」。そうおっしゃって決めていかれる方は、一定数いらっしゃいました。
気持ちは分かります。自分が良いと思ったものを贈りたい、というのは愛情の形です。でも、コスメは贈られた人が自分の顔と体に使うものです。使うのは相手であって、贈る側ではありません。
ここが、時計やバッグのようなプレゼントとは少し違うところだと思います。相手の好みから離れた色や香りを選ぶと、大切にはしてもらえても、使ってはもらえないことがあります。
贈り物として本当に嬉しいのは、「あなたのことを見ていました」が伝わるものです。自分の好みは、いったん脇に置いてみてください。
「この人は分かっているな」と思った、2つの共通点
逆に、カウンターで「この方は本当に分かっていらっしゃる」と感じた男性には、共通点が2つありました。
共通点1:相手の好みを、きちんと把握している
「普段はこのブランドを使っているみたいです」「いつも落ち着いた色をつけている気がします」。こうした情報を持ってきてくださる方は、提案の精度がまったく違いました。
完璧に知っている必要はありません。ブランド名がひとつ分かるだけでも、方向性は絞れます。ポーチの中身をこっそり見る必要もなくて、日常の観察で十分です。
- 普段の口紅は、はっきりした色か、控えめな色か
- 香りをつけている人か、つけない人か
- 持っているコスメのブランドを、ひとつでも覚えているか
- 肌の手入れに時間をかけるタイプか、手早く済ませるタイプか
この程度で構いません。ひとつでも答えられれば、カウンターでの相談は驚くほどスムーズになります。
共通点2:品切れになる前に、予約している
もうひとつが、こちらです。品切れが続出するようなアイテムを、先に予約してから来られる方。
これは、本当に感心しました。人気のアイテムは、欲しいと思った時点ではもう手に入らないことがあります。それを見越して先に押さえておく。この段取りができている方は、贈り物全般が上手なのだろうと思います。
色と香りを外しても、ちゃんと嬉しいもの
では、相手の好みが分からないときはどうすればいいのか。答えはシンプルで、色と香りの好みに左右されにくいものを選ぶことです。当てにいくのではなく、当てなくていいものを選ぶ。
手元のケアアイテムは、その代表です。色を選ぶ必要がなく、サイズもありません。使わない人がほとんどいない、という点でも安全度が高いカテゴリーです。
もう少し予算を上げられるなら、同じ「手元のケア」で格を上げるという考え方もあります。色を選ばなくていいという安全性はそのままに、箱を開けたときの特別感が変わります。
どうしてもリップを贈りたい、という方もいらっしゃると思います。その場合は、色を指定して選ぶタイプではなく、唇のうるおいに反応して自然に色づくタイプを選んでください。相手の好みの色を知らなくても、外しにくくなります。
💡 予算から具体的に選びたい方は プレゼントコスメおすすめ|予算3千円・5千円・1万円 に、価格帯ごとの候補をまとめています。
クリスマスに贈るなら、秋のうちに動いてください
最後に、一年でいちばん大事な話をします。
クリスマス時期のカウンターは、普段とはまったく別の場所になります。限定品の予約ラッシュと、ラッピングの嵐。これが、あの時期の売り場です。
ここから逆算すると、やるべきことは決まってきます。
- 限定品を狙うなら、秋のうちに情報を確認する。人気のものは店頭に並ぶ前に予約でなくなります
- 予約できるものは、予約しておく。これが、先ほどの「分かっている男性」の共通点です
- ラッピングの時間を見込んでおく。12月のカウンターは、包む作業だけで長い列ができます
「当日カウンターに行って、その場で選んで包んでもらう」。この進め方は、クリスマス時期に限っては、あまりおすすめできません。欲しいものが残っていない可能性と、待ち時間の長さ、その両方が重なるからです。
逆に言えば、秋のうちに動いておくだけで、当日の余裕がまったく変わります。ここが、贈り物の上手な人とそうでない人の分かれ目でした。
よくある質問
相手の好きな色がわからないとき、口紅は避けたほうがいい?
色を指定して選ぶタイプは避けたほうが安全です。ただしリップすべてがNGではなく、唇のうるおいに反応して色づくタイプなら外しにくくなります。色を当てにいくのではなく、色を選ばなくていいものを選ぶ、という考え方です。
予算だけ決まっているのですが、それでも選べますか?
選べます。むしろ予算が決まっているほうが相談しやすい状態です。「この金額で贈り物を探している」と伝えていただければ、そこから提案ができます。金額を先に決めておくのは、合理的な進め方です。
限定品を贈りたい場合、いつ動けばいい?
人気の限定品は発売前に予約が集中し、店頭に並ぶ前になくなることがあります。クリスマス時期を考えているなら、発表される秋のうちに確認し、予約できるものは予約しておくのが確実です。
カウンターで何を聞かれるか不安です
相手の年代と、普段使っているブランドや色の傾向がわかると提案しやすくなります。わからない場合も正直にお伝えいただければ、好みに左右されにくいものからご案内できます。準備が完璧でなくても大丈夫です。
まとめ
男性のコスメギフトがうまくいかないとき、原因はたいてい同じところにあります。相手の好みが分からないまま、色と香りを当てにいこうとすること。そして、自分の好みを基準にしてしまうことです。
逆に、うまくいく人がやっていることも決まっています。相手を普段から少しだけ見ていること。そして、欲しいものが品切れる前に動いていること。この2つだけです。
完璧に当てる必要はありません。当てなくていいものを選ぶ、という逃げ道もあります。カウンターは、そのために存在しています。予算だけ決めて、正直に相談してみてください。売り場の人間は、その相談を待っています。