「プチプラで十分じゃないですか?」——カウンターに立っていた頃、リップの棚の前でこう聞かれることは、まったく珍しくありませんでした。ドラッグストアにも落ちにくいリップがあるのに、どうして何倍もするものを選ぶのか。もっともな疑問だと思います。私自身、答えに詰まったことが何度もあります。
今回比べるのは、KATE リップモンスター(1,540円)と、ディオール アディクト リップ ティント(4,950円)。どちらも「色移りしにくさ」を売りにしたティントです。価格差は3,410円、およそ3.2倍。この差で何が変わって、何が変わらないのか。ブランドの看板を外した今だから書ける範囲で、正直にお話しします。
- リップモンスターとアディクト リップ ティントの違い(価格・色数・設計の考え方)
- 同じ「落ちにくい」でも、2本で中身が違うこと
- 3,410円の差で実際に変わること、そして変わらないこと
- 色数は24対11——選べる幅ではプチプラが上回るという事実
💡 この記事は「プチプラとデパコスの違い」に特化しています。デパコスのリップを横並びで比べたい方はデパコスリップおすすめ5選を、ブランド同士の比較はルージュ ココとルージュ ディオール比較をご覧ください。
先に結論:色持ちだけが目的なら、1,540円で足ります
スペックを並べる前に、売り場感覚での結論からお伝えします。
「色が長くとどまってほしい」という一点だけが目的なら、リップモンスターで足ります。1,540円という価格を考えると、この一本の完成度は率直に見事です。アフィリエイトのリンクを置いている記事でこう書くのは収益の面では不利ですが、事実は事実としてお伝えするべきだと思っています。
ではディオール アディクト リップ ティントの4,950円は何なのか。私の答えは、色をとどめる力そのものではなく、つけている間の唇の心地よさと、選ぶ過程、そして贈り物として成立する佇まいに払うお金だということです。ディオールはこの製品を「色移りしにくい高保湿ケア ティント」と位置づけています(メーカー公表)。色持ちだけを競う製品ではない、という宣言でもあります。
ここから先は、この結論の中身を一つずつ開いていきます。
価格・色数の比較表
| KATE リップモンスター | ディオール アディクト リップ ティント | |
|---|---|---|
| 価格(税込) | 1,540円 | 4,950円 |
| 色数 | 全24色(うち数量限定4色・WEB限定9色) | 全11色 |
| メーカーの位置づけ | 色持ちを主役にしたティント | 色移りしにくい高保湿ケア ティント(メーカー公表) |
| 買える場所 | ドラッグストア・バラエティショップ・通販 | 百貨店カウンター・直営店・公式通販 |
| 試せるか | テスターのある店舗なら可(相談相手はいないことが多い) | BAによるタッチアップで顔まわりに当てて確認できる |
| シリーズ展開 | 通常のほか、ツヤバース9色/クリスタルポッド5色/クリアトーン4色/スフレマット8色 | 単一ライン |
| 向いている人 | 色持ちを最優先/色を複数そろえたい/まず試したい | つけ心地も譲りたくない/選ぶ時間ごと楽しみたい/贈り物にしたい |
※価格・色数は2026年10月時点のものです(KATE公式・ディオール日本公式および販売店表示にて確認)。最新情報は各ブランド公式サイトでご確認ください。
同じ「落ちにくい」でも、中身が違います
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
リップモンスターは、色を唇にとどめることを主役に置いた設計です。だからこそ1,540円で、誰が塗っても結果が出る。売り場に立っていた人間として、この再現性の高さは素直にすごいと思います。一方で、色をとどめる方向に寄せた処方は、唇の状態によっては乾きを感じやすくなることがあります。これは製品の欠点というより、設計上のトレードオフです。
対してアディクト リップ ティントは、うるおいを与えながら色をとどめるという、両立の側に振った製品です。ディオール自身が「高保湿ケア」という言葉を製品の説明に入れているのが、その証拠だと思います。つまり2本は、同じ「落ちにくい」という言葉を使いながら、目指している場所が違います。
正直にお伝えすると、色が持続する時間だけを並べて比べれば、価格差ほどの開きは出ません。どちらも食事のあとは塗り直しが要ります。「デパコスなら一日中そのまま」という期待で4,950円を払うと、がっかりされると思います。そこは、はっきり申し上げておきます。
色数は24対11——選べる幅は、プチプラのほうが広い
デパコスの記事でこう書くのは気が引けますが、色の選択肢という点では、リップモンスターのほうがはっきり上です。通常ラインだけで24色。さらにツヤバース9色、クリスタルポッド5色、クリアトーン4色、スフレマット8色と、質感ごとのシリーズまで用意されています。対するアディクト リップ ティントは全11色の単一ラインです。
これは単なる数の話ではありません。1,540円なら、迷った2色を両方買うという選び方ができます。4,950円ではそうはいきません。「失敗しても痛くない」という価格そのものが、色選びの自由度になっている——これがプチプラの、いちばん本質的な強みだと私は思っています。
逆にデパコスの11色は、絞り込まれた色だとも言えます。カウンターでBAに相談しながら、その11色の中から自分の顔に合う一本を決めていく。選択肢の多さではなく、選ぶ過程に価値がある売り方です。どちらが優れているという話ではなく、売り方の思想が違います。
3,410円の差で、何を買っていることになるか
ここまでを踏まえて、差額の正体を言葉にします。3,410円で買えるのは、つけている間の心地よさ、顔に当てて選べる時間、そして人に渡せる佇まいです。色が何時間もつかという一点では、その金額に見合う差は出ません。
この3つに価値を感じない方は、無理をしてデパコスに移る必要はまったくありません。それは我慢でも妥協でもなく、お金の使いどころが違うというだけのことです。売り場にいた頃も、ご予算の話を正直にしてくださるお客様には、無理におすすめしないようにしていました。
こんな方には、リップモンスター
色持ちを最優先する方。色違いを何本かそろえて、その日の服で選びたい方。デパコスに興味はあるけれど、まずリップという沼の浅いところから入りたい方。1,540円は、試すためのコストとしてとても良心的です。
こんな方には、アディクト リップ ティント
唇の乾きが気になっていて、色持ちとうるおいを両方あきらめたくない方。カウンターでBAに相談しながら、自分に合う一本を選ぶ時間そのものを楽しみたい方。そして、人に贈る一本を探している方。4,950円という価格は、贈り物として重すぎず軽すぎない、ちょうどいいところにあります。
なお、デパコス側が気になった方は、いきなり買わずにカウンターでのタッチアップから始めるのがいちばん確実です。唇の上で色を見てから決めたほうが、結局は長く使えます。
よくある質問
リップモンスターとデパコスのリップでは、色持ちはどのくらい違いますか?
色が唇にとどまる時間という一点では、価格ほどの差はありません。リップモンスターは色持ちに特化した設計で、1,540円という価格を考えると非常に健闘しています。どちらも食事のあとは塗り直しが必要になる点は変わりません。感じ方には個人差があります。
それでもデパコスのリップを買う意味はどこにありますか?
色をとどめる力そのものより、つけている間の唇の心地よさ、カウンターで肌に当てて選べること、そして贈り物として成立する佇まいです。ディオール アディクト リップ ティントはメーカーが「色移りしにくい高保湿ケア ティント」と位置づけており、色持ちとうるおいを両立させる方向の製品です。
プレゼントにするなら、どちらがいいですか?
贈り物ならディオール アディクト リップ ティントをおすすめします。4,950円という価格は贈り物として重すぎず軽すぎず、箱を開けたときの佇まいがあります。リップモンスターは1,540円という価格が魅力である一方、贈り物単体としては軽く映ることがあります。
カウンターで試すだけして、買わずに帰ってもいいのでしょうか?
大丈夫です。BAは「今日は試すだけ」というお客様に慣れていますし、唇の上で色を確かめてから決めていただいたほうが、結果的に長く使っていただけることを知っています。遠慮なく試してください。
まとめ
リップモンスターは「1,540円で、色持ちという一点をきちんと解決する一本」。アディクト リップ ティントは「色持ちとうるおいの両立、選ぶ時間、贈れる佇まいまで含めた4,950円」。どちらが上という話ではなく、お金を払う対象が違います。
そして、これだけは最後にお伝えさせてください。最後の一本は、あなたの「好き」を信じて選んでください。私がカウンターで「私のおすすめはこちらです」とお伝えしたあと、決して自分からは決めなかったのも同じ理由です。自分で選んだ色は、人に選ばれた色より、ずっと長く好きでいられます。